🔍 日本神話の機密をポロリ『古語拾遺こごしゅうい』の訳


今回は、『古事記』に出てくる昔話 『海幸彦と山幸彦』の原形です。
こちらが初期バージョンで、『古事記』の方では、このバージョンを基に話が拡張されたのですが…… 『古事記』側ではどんな描かれ方か? 初期構想の時は、『山の兄』の存在はなかったようですね。 すぐ右下の  リンクから、『古事記』の該当記事 に飛べますので、両者を見比べてみると、どの部分をどう変化させたか? わかりますよ。   ・    ・ 
【原文と直訳】(海幸彦 原形)

天祖彦火アマツヒコヒ尊 娉海神之女 豊玉姫トヨタマヒメ命 生 彦瀲ヒコナギサ尊 誕育之日 海濱立室

天祖彦火ヒコホホデミ尊 海神の娘 豊玉姫トヨタマヒメ命と結び 彦瀲ヒコナギサ尊を生む 誕育の日 海辺に室を建つ


干時 掃守連遠祖天忍人命 供奉陪侍 作箒掃蟹 仍 掌鋪設 遂以爲職 號曰蟹守 《今俗謂之借守者 彼詞之轉也》

是に際し 掃守連ははきもりのむらじの遠祖 天忍人アメノオシヒト命 供奉し陪侍す 箒にて掃き、蟹を作る 仍って 鋪設を掌り 遂にこれを職とす 号して蟹守と云う《今の俗に借守と呼ぶ者 此の詞の転じなり》

テーブルデザインピンク2行 なんか表現が古くありません? 私の頭では、意味がよくわからないです……
このままでは、よくわかりませんよね? 以下は、【原文】の現代訳バージョンになります。
古語拾遺こごしゅうい』第1部 (海幸彦 原形) 「従五位下」官位 斎部宿禰廣成いんべのすくね ひろなり (奈良・平安時代)

天の祖先、彦火尊は、海の神の娘、豊玉姫を妻に迎えられ、お二人には彦瀲尊ひこのなぎさのみことという御子が授かりました。 彦瀲尊が生まれた日には、海辺に家が建てられました。 その際、掃守連そうもりのむらじの遠祖である天忍人命アメノオシヒトノミコトが仕え、お二人に随行されたとのこと。 彼は蟹で箒を作り、その場所を清掃する役割を担い、またその場所の設営も管理されました。 結果として、これが彼の職務となり「蟹守かにもり」と称されるようになったのです。

📼 作者の斎部廣成いんべの ひろなり 一人語り風

『海幸彦と山幸彦』 なくした釣り針がキッカケで海底に潜り、そこで出会った海の神の姫君と結婚し、姫君が海辺の「鵜の羽」の屋根の産屋で、なぜか蛇の姿で子を産んだ鸕鶿草葺不合尊うがやふきあわせずのみことというお話の原形ですな。 ちなみにこの姫君の名は、豊玉姫とよたまひめ。 どこかで聞き覚えるある名ですな。

🎓 『古語拾遺』を理解する、分かりやすい解説

『海幸彦と山幸彦』の原形。 構想段階では、このような設定でした。 物語というより、どちらかというと『構想メモ』と、話を書くに至った『由来』の説明。 それがどのように転んで、のちの『神話』になるのか? その形成過程が分かる、貴重なお話となっています。   ・    ・  初期バージョンでは、後に古事記版の『海幸彦と山幸彦』で重要な役割を果たす「海の兄」というキャラクターの存在はまだありませんでした。 後に、今回の書を元にして、『古事記』の『海幸彦と山幸彦』としての物語が発展し、話の背景や展開も大きく膨らまされました。 この過程で、海の兄火照命ほてりのみことや海の王などの新たなキャラクターが追加され、物語本編も、釣り針をなくす話や海底王宮に連れて行かれる(浦島太郎の竜宮城を連想させる)新しい要素が導入され、あの「蟹守かにもり」の由来のお話から、どんどん規模が大きくなったのです。 今回の書は『古事記』の『海幸彦と山幸彦』の物語の原点で、知られている神話は、ここから話を膨らませて作られました。 NEXT『古語拾遺』第2部 神武天皇東征








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